喫茶せきね345【二号店】

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展覧会『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇跡』を見て感じた3つのこと、そして1つの疑問

こんばんは。せきねです。
3月22日に仕事を休み、個展を2つ見に行きました。久々に平日に休みを取り、ゆっくりと個展を堪能してきましたので、感想を書きたいなと思います。

見に行った個展は、

の2つです。どちらの個展も印象深かったのですが、まずは岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』の感想を書きたいと思います。

一言で感想を伝えるなら、圧倒されました

僕の感想を書く前に、岡上淑子さんについてや、今回行った展覧会について簡単にまとめたいと思います(僕の記録のために)。

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美術館外にある案内

フォトコラージュ作家、岡上淑子とは

1950年代に彗星のごとく登場した岡上淑子は、日本におけるシュルレアリスム運動を先導した瀧口修造に見出され、写真媒体を活用したフォトコラージュ作品によってその比類ない才能を開花させました。1950年から56年までのごく限られた期間に制作された岡上のコラージュ作品は、マックス・エルンストによるコラージュの影響を享受して饒舌さを増していきます。

引用:東京都庭園美術館・展覧会概要

岡上淑子さんは1928年、高知県に生まれ、現在もご健在だそうです。
1929年に東京へ転居し、1967年に高知県へ戻られたそうですが、第二次世界大戦時の東京大空襲を経験し、作品に大きな影響を受けたとのことです。
雑誌の切り貼りをしたコラージュ作品が代表的ですが、写真や絵画などの作品も残しており、そちらの作品も印象的でした。
引用:Wikipedia・岡上淑子

展覧会『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』

作品は、戦後連合国軍の置き土産として国内にあった、LIFEのような海外のグラフ雑誌や、VOGUEやHarper's BAZAARといったファッション誌を素材とするものであり、戦後復興期の時代を反映した報道写真による背景と、前景に浮かび上がる当時最先端のモードは、鮮やかな対比を描きながら独特の美や世界観を導き出して、私達の心を揺さぶります。

近年になり再注目されている同作家の活動は今や国際的な評価を得ており、現代のコラージュ作家たちにも多大な影響を与えつつあります。本展では、国内所蔵に加えて米国ヒューストン美術館の貴重な所蔵作品が、この度初めて日本へと里帰りいたします。新たな時代への息吹を感じさせるこのユニークな表現世界を、作家による詩篇や後に描かれたスケッチ、関連資料、京都服飾文化研究財団ご所蔵のドレスによる参考展示などとともにご紹介いたします。

引用:東京都庭園美術館・展覧会概要

作品の制作は1950年から56年までと僅かな期間しか行っていないのですが、2000年ごろから再評価されるようになり、国内・国外で何度も個展が開催されました。
今回の会場には、展覧会概要にもあるように、コラージュや写真以外にもドレスや関連資料が展示されてました。時代背景を理解しながら作品を見ることができたので、事前知識がなくても楽しめる展覧会でした。

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会場にある写真の撮れる作品_『幻想』

感想

以下、感想です。展覧会で感じたことを3つにまとめました。

1,作家としての強い自信

岡上淑子さんが最初にコラージュ作品の面白さに目覚めたのは、文化学院での雑誌を切り貼りする課題をきっかけでした。その後、瀧口修造(1903-1979・美術評論家)さんに作品を見せた際に「続けなさい」と激賞されました。
それからマックス・エルンスト(1891-1976・ドイツ人画家・彫刻家)の作品に触れ衝撃を受け作風も変わっていきました。

これらの経験からなのか、展覧会で見た作品群からは、一切の迷いを感じませんでした。作品を考えて制作していたのか、偶然の産物に任せていたのかはわかりませんが、作品から感じる強い意志・エネルギーに、僕は気圧されっぱなしでした。

2,独特の感性・世界観

岡上淑子さんの作品はほぼ全てに女性が現れます。そしてその女性はみな、端的に言えば異形です。だからこそのメッセージ性があると感じているのですが、異形好きの僕としては、そんな世界観にどっぷり浸かれてとても興奮しました。

展覧会を歩き進むごとに、次々に目に入る作品、そのどれもに、他のどれとも違うメッセージ性を持った異形の女性たちが現れる。
そんな世界観を堪能したい方にはおすすめの展覧会でした。

3,強いメッセージ性

作品に現れるのは女性だけではありません。男性も現れます。しかし、男性たちには個性はありません。
戦後の、必死に復興に取り組んでいた時代。男性たちは同じような格好をして、同じような仕事をして、右向け右に働いて。それを岡上淑子さんは、つまらない、不自由なものに感じ、自分たち女性は、そんな男性たちを惑わす自由な存在だと捉えるようになりました(展示されていた説明書きを読んで僕が感じたことなので、解釈違いがありましたら教えてください)。

自由を象徴する女性たちは男性たちよりも体が大きく描かれ、造形は人形にとらわれない。『私達は自由よ』、そんな強いメッセージを、作品群から感じました。

総評・疑問

行ってよかったです。東京都庭園美術館の神聖な雰囲気に相まって、岡上淑子さんの世界観を堪能できました。

でも、ひとつ疑問が残ります。
岡上淑子さんは東京大空襲を経験し、焼け野原になった東京を見てインスプレーションを得たと解説にありました。しかし、作品の多くには、焼け野原とは対照に水の要素が多く、洪水や津波を連想させるものが多くありました。
スマトラ沖地震東日本大震災など、津波と聞いて思い浮かず災害は2000年以降に多くあり、それらの災害から岡上淑子さんの作品に惹かれた人もいたかもしれません。

しかし、岡上淑子さんが作品を制作したのは1950年から56年まで。なぜ焼け野原にインスプレーションを受けた岡上淑子さんが、洪水や津波を連想させる作品を多く制作したのか。
何か思い浮かぶ方がいらっしゃいましたら、教えていただきますようよろしくおねがいします。


今回はここまで。
展覧会『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』は2019年4月7日まで、東京都庭園美術館で開催されています。ご興味ある方はぜひ。

また近々、もう一つの個展『変わる廃墟展 2019 in 東京』の感想を書きたいと思います。ではまた。
参照:東京庭園美術館